4−C 狸が化かした話を聞いてみよう
このコーナーでは、市内にのこっていた、狸が人を化かした話を聞いてみましょう。昭和22年(1945年)ごろに加太で狸が人を化かした話で、昭和52年(1977年)4月16日に録音されたものです。
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私がその知っとるのは、狸やったな。狸は女には化けませんのやわ、坊主とか相撲取り。私の見たんは、フクタニマンゾウて言う人や、中在家(加太中在家)のな、な。私が、そやな、そいでも2、30年前やな、このちょうど山のつづきに、板屋(加太板屋)を越す道がありますんや、古い道が。そこへ、その人が山から帰りに、薪をかついで、それで酒が好きな人でしたがな。それでちょっと一杯、サワダマゴクロウ、タケオさんとこで一杯よばれて。はー、これ峠やでええわ、ウチが下やで、中在家見えますやろ。ほいで、見たら、ちょっとも明かりがつかんだ。そのときは電気がありましたんやけどな、いつもなら、信号(鉄道の信号)がシャーとして電気がつくのに、電気がつかんておかしいなぁと思て、ホイと置いて。今の話や、たばこ吸いかけたら、板屋の方からね、9尺(2メートル70センチほど)ぐらいあったて言いますから、(聞き取れず)みたいな相撲取りが。前かけをこうバーっと出して。そんな相撲取りは、あいには前かけ出しとらんのや、それが化かされとるわけや。ほんで、湯気が立っとんのやて、風呂から出たばっかりで、ムクムクしとるんやて、「相撲をとろう」て。あー、これはだましやがったて思うて。それ、よー、だまされたん分かったちゅうたらさー、かしこいわな、酒飲んどっても。9尺もあるもんが、ここが見えたて言うんやで、(聞き取れず)のここがな。こんなんが化かしてくると思うて、拾って来た棒でこうなぐったら、ポイと受けたんやて。いっくら引っぱろうがどうしようが取れやへん。それで、ヤーとよぼったんが、キチザエモンに聞こえたんや。ゲンサコさんが近所の家へ風呂入りに行って、ちょうど10時ごろに。帰って来たらマンさんがえらいくどい、やかましい事言うとる、山の上で。鐘鋳場(関町金場)から来てござったな、嫁さんが、あの人と親父さんとが提灯持ってな、犬1匹つれて、むかえに来たんや。また、マンがケンカしとる。ほいで、引っぱっとってもぬけんし、言うとったら、なんやペロペロと来たもんやで、ひょいとながめたらウチのクロ(犬)やったて。ほいたら、むこうへ電気がパーと見えて、相撲取りも何もおらへん。えらいだまされたわて。棒やなんやか持ってな、うちわ持って帰って来た。あくる日来たんや、ウチへ。なんやったんやて、おれが獲ったろまいか、狸に決っとる。ウチにええ犬おったで、この山へすぐ上がって、狸をもうすぐ追い出した。ほいで、そこが、私んとこちょうど、このへんがそうやでな、あのへんから眺めたら学校の運動場で鳴くんや、ワーワー犬が。そいで、むこうへまわってくるでさ、むこう、えらいハゲ(木が生えていないところ)がありますんや、狸がこれ通るでと思うて、ちょっと鉄砲持ってかまえてこうやっとったんや。ムクムクムクと上がって来て、そんなんあとまわしや、バン。それで、それ1匹獲っといて、松の木にくくっといて。また、犬が、もう1匹がおる。2つおんな、て思うて、こうムネづたいに行ったら、下で声がしとったでな。だれかしらんと思ったら、ヨッサンとこのオイさんで、あのなんとかいう、名前わすれたわ、スエマツさんの養子に行ったウチの親父さん、えー、フサさん。あの人らが猟師で、えらい狸獲ったて、また、2つほど。もう、それからちょっとも(聞き取れず)。それを私獲ってあげた。 |
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