「屋根のない博物館」の創出


地域の歴史文化を守り伝えるとは

 「亀山市はどのような特色がありますか?」という問いかけに、わたしたちは何と答えるでしょう。「豊かな自然」「交通の要衝」とあわせて、ヤマトタケルや鈴鹿関、街道や城下などに代表される「悠久の歴史文化」をあげることができます。
 亀山市の歴史文化は、亀山市らしさを映し出す大きな独自色といえるでしょう。同時に、 亀山市の歴史文化を守り伝えることは、その地域で長い年月くらしてきた先人の誇りを受けつぐことでもあります。

 地域の歴史文化を守り伝えてゆくためには、行政のみならず何よりも地域のみなさんがその歴史文化を愛し、大切に次の世代に渡してゆく意識をもち、そのためのしくみ作りが必要です。亀山市歴史博物館は、平成6年(1994)の開館以来、地域の歴史文化を守り伝えるために何ができるかを常に考えてきました。



『亀山市史』の編さん

 亀山市歴史博物館では、平成15年度(2003)から平成22年度(2010)までの8年間をかけて、『亀山市史』の編さん事業をおこないました。
 『亀山市史』は、日本初のIT(Information Technology)市史として編さんされ、IT市史の完成によって、歴史博物館は今まで以上に、地域の歴史文化に関しての大きな情報発信源を持つことになりました。【『亀山市史』】



求められる地域博物館の役割とは?

 これからの歴史博物館は、歴史文化を守り伝えるために、博物館に所蔵される資料だけではなく、地域にある資料の保存や活用についても、そのサポートを行なうことを博物館の重要な役割と考えます。
 また、市民のみなさんが、地域に伝わる様々な歴史文化を活用した地域づくりを進めてゆく際に、歴史博物館スタッフの高い専門性を活かして、地域づくりに対してのコーディネートやアドバイスなどの支援ができると考えています。



小・中学校との連携

 地域の歴史文化を守り伝えてゆくことは、今を生きる私たちだけではなく、次世代を担う人びとに受け継がれなければなりません。
 じつは、亀山市歴史博物館の課題として、学校教育との連携の弱さが挙げられていました。歴史博物館には、地域の歴史文化を物語る数多くの資料があり、歴史文化に関しての高い専門性を有するスタッフ(学芸員)がいます。これらは、市域の小・中学生が地域を愛する力を育むため、学校における地域学習に十分に活用されることも、博物館の重要な役割と考えます。



「『屋根のない博物館』の創出」とは?

 地域の歴史文化は、古墳、仏像、古文書、民俗芸能や生活習慣、風景や言い伝えといったさまざまな「もの」やことがらが複雑に組み合わさっています。また、歴史文化はひとつの地域で完結するものではなく、亀山市という地域の中に、人や物の動き、場所、経緯、種類などによって、網の目のように張り巡らされた歴史文化のネットワークが存在しています。地域のみなさんが自分たちの地域の歴史文化を再発見し、このネットワークを利用して情報を発信し、その情報をもとに人々が交流し、ともに考え、ともに学び、ともに支えあうことこそが、「地域の歴史文化を守り伝えてゆく」ということではないでしょうか。このしくみを、あたかも市域全体が博物館であることにたとえて、「屋根のない博物館」と呼ぶことにしました。そして、「屋根のない博物館」を創出し、地域の歴史文化のつなぎ役となってゆくことをこれからの歴史博物館の役割と位置付けました。



「屋根のない博物館」の創出事業

 亀山市文化部では、「屋根のない博物館」の創出を、「かめやま文化年」とあわせた部の主要な取り組みと位置付け、平成24年度から実施の「亀山市後期基本計画」の中の主要施策として進めてゆくことになりました。この流れを整理したものが、【「屋根のない博物館」の創出事業体系図】(PDF形式・171KB)です。
 特に、「次世代を担う人づくり」を重要視し、学校との連携を最重点課題として最初に取り組むこととしました。平成24年度から26年度までは、「地域学習支援推進事業」を軸として、次の事業をおこないます。



○地域学習支援事業

(1)教職員のための博物館利用プログラムの作成

小・中学校の学習指導要領に基づき、学校で博物館や博物館資料を活用した地域学習の支援を行うために、教職員にむけた博物館利用プログラムを策定します。

(2)スクールミュージアムの実施

学校の空きスペースや行事などを利用して資料を展示し、地域や亀山市の歴史文化に身近に接する機会を作ります。また、展示や地域学習のためのユニットやガイドラインをつくります。

(3)学習支援サイト(web資料集)の作成公開

小・中学生が学校や家庭での地域学習支援や調べ学習を行うために、亀山市史をもとに地域の歴史文化に関してのデータを集約したwebページを作成します。

※地域学習支援事業の取り組み状況については、【地域学習支援事業の取り組み】をごらんください。


○地域資料保存活用事業

(1)地域の歴史文化の情報発信

『亀山市史』(IT市史)や収蔵品データベースの管理とその活用を進めてゆきます。また、印刷製本した市史のデータを図書館など必要な場所に配置します。

(2)地域資料の保存活用

緊急雇用創出事業(重点分野雇用創造事業)により、地域の歴史文化を活かしたまちづくりに必要となる人材を育成するとともに、館蔵の衣笠貞之助・服部四郎関係資料のデータベース化を進めます。

○地域連携事業

(1)地域歴史文化を活かした地域活動を進めておられる方々への協力、地域の資料を所蔵されている方々に対して、その保存や活用に対する支援を進めます。

(2)地域に密着した博物館に即した展示の在り方を検討します。

(3)「かめやま文化年」にあわせて、開館20周年企画展(衣笠貞之助・服部四郎)を開催します。