4.市域の醸造業者が加入していた組合
市域で醤油や酒を造っていた醸造業者は、さまざまな醸造組合に加入していたよ。醸造組合は相互扶助の役割も担っていたから、加入していると、何かあった時に助けてもらえたんだ。

①醤油味噌醸造業者の組合
日野屋の鈴木重平は、三重県醤油同業組合に加入し、明治32年(1899)頃より評議員や鈴鹿支部長として深く関わったんだ。鈴木重平は、昭和13年(1938)5月25日に鈴鹿支部長に当選した後は、翌14年(1939)11月30日に伊勢醤油工業組合の理事に就任し、さらに翌昭和15年(1940)には、三重県醤油同業組合の後身である三重県醤油味噌工業組合の鈴鹿地区長に委嘱されたんだ。
ここでは、鈴木家がのこした資料から、この地域の醤油や味噌の醸造業者が加入していた組合についてみていくよ。
[4-1]


4-1:三重県醤油同業組合第六支部長委嘱状
年代:明治32年(1899)
館蔵鈴木家資料
館蔵鈴木家資料

これは、日野屋の鈴木重平が明治32年(1899)に三重県醤油同業組合の第六支部長に委嘱された時の委嘱状だよ。「第六支部」というのは、鈴鹿支部のことなんだ。つまり、鈴木重平が鈴鹿支部長になったということだね。
[4-2]


4-2:「三重県醤油同業組合鈴鹿支部」印鑑
年代:明治時代
館蔵鈴木家資料
館蔵鈴木家資料

これは、三重県醤油同業組合鈴鹿支部の印鑑だよ。鈴木重平が、鈴鹿郡支部長をしていたから、この印鑑が鈴木家にのこされたんだね。
[4-3]


4-3:伊勢醤油工業組合理事当選通知
年代:昭和14年(1939)
館蔵鈴木家資料
館蔵鈴木家資料

鈴木重平が、昭和14年(1939)11月28日の伊勢醤油工業組合の臨時総会で、理事に当選したんだって。伊勢醤油工業組合っていう組合があったんだね。

これは、三重県醤油味噌工業組合の定款なんだ。この定款を読むと、本部は津市に置かれ、目的は、「しょうゆ製造業者・みそ製造業の中小企業者の改善発達を図るための必要な事業を行ない、これらの者の公平な経済活動を確保し、ならびに経営の安定および合理化を図ることを目的とする。」ことなんだって。また組合に加入できたのは、三重県内の醤油と味噌の生産業者と、醤油や味噌を生産する事業をおこなう事業協同組合・事業協同小組合だけなんだね。
[4-5]


4-5:三重県醤油味噌工業組合鈴鹿地区長委嘱状
年代:昭和15年(1940)
館蔵鈴木家資料
館蔵鈴木家資料

三重県醤油味噌工業組合は、三重県醤油同業組合の後身にあたる組合で、昭和19年(1944)3月末に解散したんだ。
昭和15年6月24日、鈴木重平は、この組合の鈴鹿地区長に委嘱されたんだ。三重県醤油同業組合の頃も鈴鹿支部長に委嘱されていたね。前年には、伊勢醤油工業組合の理事にもなっているし、鈴木重平は、いろいろと活躍していたんだね。

これは、三重県醤油味噌工業共同組合の定款だよ。もしかして、三重県醤油味噌工業組合の後身かな。「本組合は組合員の相互扶助の精神に基づき、組合員のため必要な共同事業を行い、組合員の公正な経済活動の機会を確保し、もって組合員の自主的は経済活動を促進し、且つ、その経済地位の向上を図ることを目的とする。」と書かれていて、三重県内に事業所を持ち、販売の目的で醤油味噌の生産を生業とした小規模の事業者に組合員の資格があったんだ。

三重県醤油味噌工業共同組合の組合員名簿がのこされていたよ。この名簿によれば、市域でこの組合に加入していたのは、鈴木醤油株式会社(日野屋/西町)・田中醤油株式会社(東町)・田中格郎(田中屋/関町新所)・藤川茂助(近江屋/本町)・吉澤信輔(岩木屋/関町中町)なんだ。

②酒造業者の組合
のこされた資料をみると、この地域の酒造業者が加入していた組合には、鈴鹿郡酒造組合・津市安濃奄芸河曲鈴鹿一志酒造組合(一市五郡酒造組合)・鈴鹿郡酒類同業組合・三重酒造組合・三重県酒造聯合組、そして組合かどうかはわからないけれど、銘醸会という会があったことがわかったんだ。もしかしたら、他にも組合や会があったかもしれないね。だけど、今は存在しない組合ばかりだから、なかなかそれぞれの組合の実態がわからないんだ。

これは、明治28年(1895)を除く明治26年(1893)から32年(1899)までの鈴鹿郡酒造組合の経費や聯合(三重県酒造聯合組合か)会費について、その内訳や鈴鹿郡内の組合員への割当金を記録したものなんだ。鈴鹿郡酒造組合がいつできたかはわからないけれど、この冊子をみると、この頃あったの市域の酒造場がわかるんだ。詳しくは、表にまとめたからみてほしい。
また、経費の中には、「亀山町酒造組合費取替分」とも書かれているんだ。亀山町に酒造場を持つ酒屋でつくった組合もあったんだね。
| 組合員名 | 住所 | 経費割当年度(明治) | |||||
| 26年 | 27年 | 29年 | 30年 | 31年 | 32年 | ||
| 草川善太郎 | 亀山町大字西町 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 堀伊平次 堀喜三郎 |
亀山町大字野村 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 岡本半平 岡本半造 |
亀山町大字野村 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 西谷與一 | 亀山町大字西町 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 柴橋英吉 | 亀山町大字西町 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 坂直三郎 坂直次郎 |
加太村大字中在家 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 小林國松 | 野登村大字両尾字平尾 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 上田友三郎 | 野登村大字安坂山字池山 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 杉森嘉益 杉森嘉平(兵衛) |
加太村大字梶ヶ坂 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 市川誠(清)蔵 | 関町大字中町 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 中林市平 | 関町大字中町 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 三谷耕一 | 関町大字新所 | ○ | |||||
| 松尾傳吉 | 加太村大字北在家 | ○ | |||||
| 尾崎新之丞 | 関町大字新所 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
| 葛西平次郎 葛西平七 |
川崎村大字長明寺 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
| 駒田宅右衛門 | 亀山町大字西町 | ○ | ○ | ○ | |||
※明治28年度は、原本に記載なし

これは、津市安濃奄芸河曲鈴鹿一志酒造組合の議事と細則を記したものなんだ。この組合は、明治18年(1885)の三重県布達の趣旨に基づいて設けられた酒造業者の同業組合なんだ。ちなみに、市域で加入していた組合員は以下のとおりだよ。
西谷與一・草川善太郎・
堀伊平次(管理人:堀喜三郎)・
岡本半平・三谷耕一・松尾傳吉・
柴橋英吉・小林國松・上田友三郎・
市川清蔵・中林市平・杉森嘉益・
坂直次郎
堀伊平次(管理人:堀喜三郎)・
岡本半平・三谷耕一・松尾傳吉・
柴橋英吉・小林國松・上田友三郎・
市川清蔵・中林市平・杉森嘉益・
坂直次郎

これは、明治34年(1901)11月11日に作成された、鈴鹿郡酒類同業組合規約だよ。表紙に鈴鹿郡酒造組合の印が押されているから、鈴鹿郡酒造組合の後身なのかなあ。鈴鹿郡内に在住する酒類造業者で組織され、組合員が一致協同して、営業上の弊害を矯正し信用を保持することを目的としてつくられた組合なんだ。 市域で加入していた組合員は以下のとおりだよ。
西谷與一・堀喜三郎・
草川善太郎・駒田宅右衛門・
伊東勇作(住所:両尾)・
上田友三郎・杉森嘉兵衛・
市川儀蔵・小林國松・中林市平・
尾﨑新之丞・坂直次郎・
徳田與惣吉(住所:東町)
草川善太郎・駒田宅右衛門・
伊東勇作(住所:両尾)・
上田友三郎・杉森嘉兵衛・
市川儀蔵・小林國松・中林市平・
尾﨑新之丞・坂直次郎・
徳田與惣吉(住所:東町)

これは、三重酒造組合の契約書の写しなんだ。この組合はいつできたのかはわからない。この契約書の第2条に、「本組織ノ区域ハ三重県一円トス此区域ニ於テ酒類ヲ製造スル者ハ酒造税法第四拾条ニ依リ組合員として総テ此契約書ノ規定を遵守スヘシ」とあるから、酒造税法第40条により、県内の酒造業者はすべてこの組合の会員になることになったんだね。そして、この契約書によれば、鈴鹿郡域には亀山支部が置かれているよ。
ちなみに、現在ある三重県酒造組合は、平成16年に発足してるので、名前は同じだけど、まったく関係ないよ。

この木札の「第七十五号」は西町の西谷家、「第八壹号」は、関町中町の中林家にのこされていた三重酒造組合の会員証なんだ。会員には、このような木札が配られていたんだね。
[4-12]

[4-12]

4-12:「三重酒造組合会員之証」木札
年代:不明
(左)館蔵西谷家資料/(右)中林大典家所蔵資料
(左)館蔵西谷家資料/(右)中林大典家所蔵資料
[4-13]


4-13:亀山町銘醸会の亀山町生産物大品評会出品風景写真
年代:昭和4年(1929)
岡本家所蔵資料
岡本家所蔵資料

昭和4年(1929)8月21日から25日まで5日間開催された亀山町生産物大品評会に、銘醸会として、西谷與一・草川善太郎・堀喜左衛門・岡本半造が清酒を出品したんだ。この写真は、その時の出品風景を写したものだね。どうも、銘醸会という酒造業者でつくった会があったみたいなんだ。それぞれ、出品した銘柄は次のとおりだよ。
西谷與一:文武
草川善太郎:草乃露
堀喜左衛門:鐸乃花
岡本半造:鈴鹿正宗
草川善太郎:草乃露
堀喜左衛門:鐸乃花
岡本半造:鈴鹿正宗
[4-14]


4-14:「清酒文武 銘醸会員 西谷與一」木札
年代:昭和4年(1929)
館蔵西谷家資料
館蔵西谷家資料

この木札は、昭和4年(1929)8月21日から25日まで開催された亀山町生産物大品評会において、出品した清酒の一升瓶の前に立てられた木札だよ。4-13の写真にも写っているね。

このメダルも、昭和4年(1929)8月21日から25日まで開催された亀山町生産物大品評会で、銘醸会会員として出品した西谷酒造の西谷與一がもらった優良牌だよ。ただ不思議なことに、受賞者一覧の中に西谷與一の名前は載っていないんだ。なんでだろう。
[4-16]


4-16:「正宗」ラベル
年代:昭和時代か
岡本家所蔵資料
岡本家所蔵資料

このラベルは、酒瓶の胴部分に貼るラベルなんだ。岡本家にのこされていたよ。このラベルの中央に「正宗」とある。岡本酒造場の銘柄の1つに鈴鹿正宗があるけれど、ラベルの絵柄からは鈴鹿正宗かどうかはわからない。この「正宗」は、もしかしたら銘醸会用に造られた銘柄なのかなあ。

この瓶は、徳利かどうかはわからない。肩部分に「三重県酒造聯合組合」と書かれているから、このような名称の組合が存在したことがうかがえるね。3点とも形は同じ。デザインも銘柄以外は同じデザインに統一されているね。
文武:西谷與一(西谷酒造場)
亀乃井:岡本醸造
延年:坂(
店)
亀乃井:岡本醸造
延年:坂(
店)
4-17:三重県酒造聯合組合瓶(文武・亀乃井・延年)
年代:年代不明
(左)館蔵西谷家資料/(中央)岡本家所蔵資料/(右)坂家所蔵資料
(左)館蔵西谷家資料/(中央)岡本家所蔵資料/(右)坂家所蔵資料












