4.用途からみた季節
収蔵品の中には、昔の農具や生活用品、また普段着る衣服や遊ぶための道具など、いわゆる民具とか民俗資料と呼ばれるものが多くある。これらは、1年を通して使用されたものもあれば、決まった季節にしか使用されないものもある。このうち後者は、それがいつどのように使われたものなのかを知ることで、季節を発見することができる。
そこで、このコーナーでは、このような用途からみた時に季節を感じられる収蔵品を紹介する。
そこで、このコーナーでは、このような用途からみた時に季節を感じられる収蔵品を紹介する。
(1)農作業の道具
農作業の中でもこの地域の稲作は、冬に土を作り、春に苗を植え、夏の間は草取りなどの中間管理をおこない、秋に収穫するという一年をとおしたサイクルがある。そして、季節によっておこなう作業が異なるのであれば、使われる農具も、その季節ならではの農具といえるのではないだろうか。そこで、ここでは、稲作に使われた農具から季節を探す。
[4-1]

4-1:馬鍬(マンガ)
年代:昭和時代
館蔵資料
館蔵資料
馬鍬(マンガ)は、稲作において、春先におこなう田の土砕きや田植え前の代掻きに使われた道具である。牛につけておこなった。展示している馬鍬は、歯の部分に、代掻き時に取り付けたと思われる板がある。
[4-2]

4-2:籾押さえ
年代:昭和時代
館蔵資料
館蔵資料
籾押さえは、春におこなわれる種籾を苗代に蒔く種下ろしの作業の時、水面に浮いてきた種籾を沈めるために使った道具である。
[4-3]

4-3:田植え綱
年代:昭和時代
館蔵資料
館蔵資料
田植え綱は、市内でも呼び方がさまざまで、田植え縄とか定規縄と呼ぶ地域もある。使い方は、田んぼの端から端にまっすぐに綱を張って、綱につけられた苗と苗の間隔を示す赤い印の位置に苗を植えていく。
[4-4]

4-4:二連除草機
年代:昭和時代
館蔵資料
館蔵資料
市内では、田んぼの草取りは、田植えから稲刈りまでの間にだいたい3回から5回程度行われたようであるが、除草機は、田植え後10日から1ヶ月の間頃に行われた最初の草取りの時に使われた。この頃の草はまだ小さいため、除草機を株間に入れて動かすことで、土の中に押し込む。2回目以降の草取りは、草が大きくなって除草機が使えなくなるため、この除草機は、1回目の草取りが行われる春に使う道具といえるだろう。
[4-5]

4-5:田舟
年代:昭和時代
館蔵中根(孝)家資料
館蔵中根(孝)家資料
田舟は、秋の稲刈り時に使う道具で、「ヌマダ」などと呼ばれる、稲刈り時でも膝上まで水がついているような田んぼでの稲の運搬道具である。このような田んぼでは、刈った稲束を田舟にのせ、畦まで運んだ。
[4-6]

4-6:千歯扱き
年代:昭和時代
館蔵富田家資料
館蔵富田家資料
千歯扱きは、稲の脱穀をする道具で秋に使われた道具である。使い方は、一掴み取っては、櫛で梳くように歯に通して扱く。市内では昭和初期頃まで使われていたようである。
4-7:足踏み式脱穀機
年代:昭和時代
館蔵田中(善)家資料
館蔵田中(善)家資料
足踏み脱穀機は、千歯扱きに代わるものとして登場したドラム式の脱穀機である。足で板を踏むことで、逆U字型の針金が付いたドラムを回転させ、そこに藁束を当てることで脱穀できる仕組みである。千歯扱き同様秋に使われた道具である。
(2)台所用品
収蔵品の中で、台所で使われた道具や物は、身近なものであるということもあって、民具類の中では、比較的多く収蔵している。しかし、その用途をみていくと、ほとんどが季節問わず使用するものである。ここでは、そんな中から見つけた、主に限られた季節に使用する台所用品を紹介する。
[4-8]

4-8:蠅帳
年代:昭和時代
館蔵坂井家資料
館蔵坂井家資料
蠅帳は、食べ物にハエがたからないようにするためのハエよけの道具である。主に夏のハエの多い時期に使用された。現在では、「食卓カバー」とか「フードカバー」などという商品名で、再び売られている。
4-9:飯籠
年代:昭和時代
館蔵原家資料
館蔵原家資料
昔は、竈で米を炊いていたが、毎食ごとに炊くのは大変だったので、朝、多めに炊いて、昼も夜も食べた。しかし、釜の中に入れたままにしておくと、夏場は傷んでしまうので、飯籠と呼ばれるこのような籠に保存して、風通しのよい涼しいところに置いたり、軒下にぶらさげた。これは、食べ物が傷みやすい夏に使う道具で、冬など寒い季節は、保温力のある藁でできたヨサ(飯フゴ)におひつを入れて保管した。
[4-10]

4-10:
アイスクリーム製造器
アイスクリーム製造器
年代:明治~大正時代
館蔵佐川家資料
館蔵佐川家資料
昔のアイスクリームをつくる夏に使われた道具である。桶の中に氷と塩を入れて、アイスクリームの材料の入った容器を桶の中でぐるぐる回せば、アイスクリームのできあがり。
[4-11]

4-11:アイスクリーマー
年代:昭和時代
館蔵養護老人ホーム清和の里資料
これもアイスクリームをつくる道具である。専用容器の中に入れて冷凍庫で固まらせたアイスクリームの原液を、器械にセットしてぐるぐる回せばできあがり。
[4-12]

4-12:かき餅切り器
年代:昭和時代以前
館蔵個人資料
館蔵個人資料
この道具は、冬に使う道具である。市内では、1月下旬になると寒餅をつく風習がある。この道具は、ついた餅を「かきもち」や「あられ」の形に切る時に使用する。切った餅は棚を組んで乾燥させる。「田村の風にあてると割れる」といわれ、2月中旬の田村神社の祭礼までに作業を終わらせるようにしたそうである。
(3)部屋で使うもの
私たちが居間や寝室などで使うものにも、季節によって入れかえる道具や物がある。その多くは夏や冬の季節に、押し入れや納戸などの収納場所から出したり、しまったりするものがそれである。ここでは、この地域で部屋の中で使われていたものの中から、季節で使い分けた道具やものを紹介する。
[4-13]

4-13:扇風機
年代:昭和時代
館蔵野田(明)家資料
館蔵野田(明)家資料
最近まで使われていた東京芝浦電気製の古い扇風機である。夏に使う。
参考:団扇
年代:昭和時代
館蔵金丸家・坂井家資料
館蔵金丸家・坂井家資料
と団扇は、扇風機と同様に夏に涼をとる道具である。しかし、団扇は、自分をあおぐだけでなく、火おこしの時に風を送るためにも使われるので、屋内外で一年中使われる道具でもある。団扇は、夏の頃になると、商店やイベントで粗品として配られた。ここに展示している団扇は、右から三柳軒菓子舗(御幸町)、魚政(阿野田町)、平井のパン(本町)で配られた粗品である。
[4-14]

4-14:蚊取り噴霧器
年代:昭和時代
館蔵坂井家資料
館蔵坂井家資料
大日本除虫菊(株)製の蚊取り噴霧器。商品名は「キンチョール」とある。使い方は、先についているタンクの部分に殺虫剤を入れ、水鉄砲のように蚊に向けて噴霧する。蚊のいる夏に使われた道具である。
[4-15]

4-15:ガラス製ハエ取り器
年代:昭和時代
館蔵川戸(英)家資料
館蔵川戸(英)家資料
これは、主に夏にハエを取るための道具である。「ハエ取り瓶」とも呼ばれていた。まず、瓶の中に酢・酒・砂糖などを混ぜた水を入れ、ハエを誘うために瓶の下に餌を置く。餌におびき寄せられたハエは、上に飛び上がり瓶の中に入るが、出ることができず力尽きて水の中に落ちるという仕組みである。
4-16:ハイトリック
年代:大正時代
館蔵松尾(臣)家資料
館蔵松尾(臣)家資料
尾張時計株式会社製「ハイトリック2号」で、これも夏にハエを取るための道具である。ゼンマイ仕掛けになっており、自動回転する四角柱の部分にハエの好物である酒・酢・砂糖を混ぜたモノを塗っておけば、そこにとまったハエが、網かごの方へ誘導され、捕獲できる仕組みになっている。
[4-17]

4-17:ハエ取り棒
年代:昭和時代
館蔵今井家資料
館蔵今井家資料
このプラスチック製の道具も、天井にとまったハエを捕獲する、夏に使うものである。はじめに下部の丸い容器を取り外し、半分くらいまで水を入れておく。次に先の漏斗の形をした部分で天井にとまったハエを覆い、ちょっと揺すればハエは管を通って水に落ちて死ぬ。もし、ハエがすぐに水に落ちなくても、漏斗の部分を新聞紙などを詰めて栓をしておけば、そのうち落ちて死ぬという仕組みになっている。
[4-18]

4-18:置炬燵
年代:明治時代以降
置炬燵
置炬燵
れは、冬に使用するバンドコとか行火と呼ばれる瓦製の炬燵である。中の火鉢に炭火などを入れて、布団を掛けて複数人で使う。持ち運びができるので、どこでも使用できた。寝床でも使われ、朝起きたらら布団が焦げていたということもあったそうである。
[4-19]

4-19:櫓炬燵
年代:昭和時代
館蔵柏原家資料
館蔵柏原家資料
置炬燵より後に登場した櫓のついた炬燵である。使い方は置炬燵と同じだが、置炬燵は、火鉢を出し入れする部分が開いているので、うっかり足を入れる危険があったが、これは、櫓で全面を覆っているので、置炬燵に比べて安全に使用できるようになっている。
[4-20]

4-20:豆炭行火
年代:昭和時代
館蔵金丸家資料
館蔵金丸家資料
豆炭行火は、冬に寝床に入れて使用する暖房器具である。中は石綿になっていて熾した豆炭を入れて使う。そのまま使うと熱いので付属の布製の袋や布を巻いて温度調整をして使用する。
[4-21]

4-21:電気コタツ
年代:昭和時代
館蔵北村家資料
館蔵北村家資料
松下電器産業(現在のパナソニック)製の「電気コタツ」という商品名の電気行火である。豆炭行火と同様に寝床に入れて使用する。
(4)遊びで使うもの
遊びの中には、その季節にしかできない遊びもあれば、厄除けなど、さまざまな願いをこめて遊ばれた遊びもある。ここでは、このような遊びに使われた道具や物を紹介する。
[4-22]

4-22:スキー板・ストック
年代:昭和10年(1935)頃
館蔵白沢家資料
館蔵白沢家資料
冬の代表的な遊びであるスキー。このスキー板は木製の一枚板でできており、ブーツを固定する金具はカンダハー式といわれる仕組みのものである。ストックは竹製で、部分的に牛皮が使われている。
4-23:羽子板(遊戯用)
年代:昭和時代
館蔵伊藤家資料
館蔵伊藤家資料
この羽子板は、正月の遊びである羽根つきで使われた羽子板である。実際に遊んだ形跡が残っている。羽根つきは、元々は厄払いを兼ね、旧暦の頃より正月(新春)におこなわれていた遊びであるが、この羽子板は昭和時代に遊ばれていたものなので、現在の正月の遊びの道具とみて冬の玩具とした。
[4-24]

4-24:竹製旅行鞄
年代:昭和時代ヵ
館蔵岡本家資料
館蔵岡本家資料
ボストンバックの形状をした竹製の旅行鞄である。昔は、夏用のさまざまな鞄に竹や柳などの素材が用いられた。
(5)身につけるもの
私たちが普段、服や帽子を着たりかぶったりする時は、常に季節を意識している。例えば、春なら淡い色の服を選び、逆に冬には濃い色の服を着る。これは、色ばかりでなく、使われている素材にもいえ、夏は、麦わら帽子など、涼しい素材が使われたものを選んだりする。そこで、ここでは、服や帽子など身に着けるものから季節を感じる収蔵品を紹介する。
[4-25]

4-25:カンカン帽
年代:昭和時代
館蔵松尾(臣)家資料
館蔵松尾(臣)家資料
明治時代末期から昭和初期に流行した、夏にかぶる夏用の帽子である。麦藁で作られている。
[4-26]

4-26:山高帽子
年代:昭和時代
館蔵今西家資料
館蔵今西家資料
高帽子は、明治10年(1877)頃から流行した帽子で、おもに冬用の帽子である。この帽子は昭和3年(1928)の御大典式に参列した時に着用された帽子である。
[4-27]

4-27:懐炉と懐炉灰
年代:昭和時代
館蔵金丸家資料
館蔵金丸家資料
昭和53年(1978)まで使用されていた携帯用懐炉である。現在の使い捨てのカイロとは違い、昔は、専用ケースの中に、火をつけた懐炉灰と呼ばれる燃料を入れて使用していた。懐炉灰は、よもぎ、ごま、麻殻、藁などを焼いて紙につめたものである。
[4-28]

4-28:着物
年代:昭和時代
館蔵佐野(不)家資料
館蔵佐野(不)家資料
普段着として着物を着ていた頃、冬に着ていた綿の入った着物である。







